抄録
Positron-emitting Tracer Imaging System(PETIS)を用いて、我が国の代表的なCd超耐性植物で、ハイパーアキュームレーターでもあるシダ植物「ヘビノネゴザ」の不定胚由来成植物体におけるCdの吸収動態を解析した。まず、ヘビノネゴザにおけるCdの吸収・移行をタバコやイネなどと比較したところ、ヘビノネゴザ以外では、根への取り込みにある程度時間がかかるものの、取り込まれたCdは速やかに地上部の各組織に移行するのに対し、ヘビノネゴザではCdを暴露した直後から非常に速い速度で根に取り込まれて地際部に蓄積され、その後羽葉部に移行する割合は非常に少なかった。次に、1/2MSあるいは1/4MS培地における異なるCd濃度条件(0.1~100μM)がCdの吸収速度(mol h-1 plant-1)に及ぼす影響を調べたところ、少なくともこの濃度範囲においてCdは濃度にほぼ比例した速度で吸収された。また、Cdの吸収において競合すると考えられる二価の金属のうちFe、Cu、Znの濃度(各々0~100 μM、0.025 or 25 μM、15 or 40 μM)がCdの吸収速度に及ぼす影響を調べたところ、いずれの条件にも影響を受けず、Cdはほぼ同じ速度で吸収された。これらの結果は、ヘビノネゴザにおけるCd超耐性や超蓄積能と強く関連していると考えられた。