抄録
イネWRKY45はサリチル酸(SA)を介した耐病性シグナル伝達経路のキーとなる転写因子であり、その翻訳後制御にタンパク質リン酸化が関与していることが示唆されている。これまでの解析によりイネMAPキナーゼの一つOsMPK6がSAにより活性化されることが確認されている。しかしながら、OsMPK6は複数のシグナル伝達経路への関与が示唆されていることなどから、上流のMAPKKとの組み合わせによって各シグナル伝達経路の特異性が規定されていると推測される。そこで、MAPKK からのアプローチにより、SA経路特異的でWRKY45の活性発現に関わるMAPキナーゼカスケードの同定を試みた。
大腸菌で発現させた4種のMAPKKタンパク質を用い、in vitroでOsMPK6リン酸化のアッセイを行った結果、OsMKK10-2に最も強い活性が認められた。また、GST-pulldown実験によりOsMKK10-2はOsMPK6と強く結合することが明らかとなった。さらに、dexamethazone誘導系のイネ形質転換体を用いた解析により、恒常的活性型OsMKK10-2の発現誘導により、OsMPK6の特異的リン酸化/活性化が誘導されるとともに、WRKY45の転写が促進されることを確認した。OsMKK10-2-OsMPK6カスケードのシグナル特異性および耐病性付与に関しても議論する。