抄録
組織培養系において未分化細胞は根にもシュートにも分化する能力がある。サイトカイニンは根の形成を抑え、分化をシュートへと方向付ける。私達は、サイトカイニン高感受性突然変異体ckh1,ckh2においてサイトカイニンで強く抑制される16個の遺伝子の解析をおこなった。プロモーター/レポーター融合遺伝子を用いた解析により、これらの遺伝子の多くは根の原基、根端、根全体、根毛形成細胞などで特異的に発現していた。これらの遺伝子の機能を知るため、過剰発現体の表現型を観察したところ、一つの遺伝子について、子葉に根が形成される形質転換体が見いだされた。この遺伝子は根端で発現しており、転写因子をコードしていた。この遺伝子を転写抑制ドメインをコードする配列、SRDXと融合させ、植物に導入したところ、根の一部にシュートの性質を与えた。これらのことから、この遺伝子の機能として、根端分裂組織の構築と細胞の根への分化に関わることが予想された。