抄録
沖縄原種の褐藻であるオキナワモズク(Cladosiphon okamuranus)では、珪藻、褐藻などに独特のアンテナであるフコキサンチン‐クロロフィルa/c蛋白質(FCP)が光化学系I、II反応中心にエネルギーを供給していると考えられているが詳細は不明である。伊波らは近年このオキナワモズクの藻体に至る前駆体である盤状体の大量培養に成功した。前回の年会で報告したように、我々はこの盤状体よりFCPを単離・精製する手法を確立し、FCPが二種類のサブユニットから成る3量体を形成していることを見出した(以下、これをモズクFCPと呼ぶ)。FCPにおいて光エネルギーを伝達するという機能を発現するのは、FCPに結合した光合成色素である。現在、モズクFCPの普遍的な機能の解明、および生育条件により機能がどのように変化するのかについて研究を進めている。そこで今回我々は、生化学的な純度の高いモズクFCPを用いて、これに結合している光合成色素の光学特性を決定した。まず高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及び 1H-NMR測定を組み合わせて、結合する色素を同定し、化学量論比を決定した。またモズクFCPの蛍光及び蛍光励起スペクトル測定により、Chl cからChl aへ、フコキサンチンからChl aへのエネルギー伝達効率を算出し、当日議論する予定である