抄録
我々は光合成装置形成に関わる協調的な遺伝子発現制御機構の解明を目的として、シロイヌナズナの根の葉緑体分化に着目して研究を行っている。これまでに、根の葉緑体分化には、1)HY5を介した光シグナル伝達が必須であること、2)サイトカイニンおよびオーキシンが、それぞれ促進的、抑制的に働くこと、3)これら植物ホルモンはHY5とは異なる転写因子を介して発現制御すること、を明らかにしている。最近、光合成装置形成を協調的に制御するGARP型転写因子Golden-2 like (GLK)が同定された。シロイヌナズナのアイソフォームGLK1, GLK2の発現ついて、緑化した根で解析した結果、GLK1は検出できなかったが、GLK2の誘導が認められた。二重変異体glk1 glk2、過剰発現株GLK1OEおよびGLK2OEにおける根のクロロフィル蓄積を調べた結果、glk1 glk2ではWTに対して有意に低下していたが、GLK1OEおよびGLK2OEでは、それぞれ6倍および3倍の蓄積が認められた。以上より、植物ホルモンによる根の葉緑体分化制御にはGLK2が主要な制御転写因子として関与していることが示された。また、これらのラインにサイトカイニンやアンチオーキシンPCIBを処理すると、更なるクロロフィル蓄積の促進が認められたため、植物ホルモンによる葉緑体分化制御には他の転写因子も関与していることが示された。