日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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葉緑体の正常な発達はFIL の正確な発現パターンの制御に関与する
*為重 才覚近藤 真紀渡辺 恵郎豊倉 浩一槻木 竜二西村 幹夫岡田 清孝
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p. 0144

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抄録
多くの植物の葉では、柵状組織と海綿状組織など、向軸側(表側)と背軸側(裏側)で異なる細胞分化が見られる。これらの細胞分化は、葉原基の段階から向軸側または背軸側の領域でのみ特定の遺伝子群が発現することで制御されている。しかし、その発現領域がどのように決まるかについては理解が進んでいない。我々は背軸側だけで発現する遺伝子の一つFILAMENTOUS FLOWER (FIL )を用いて、向軸側/背軸側に特異的な遺伝子発現の制御機構を解析している。
シロイヌナズナ突然変異体 enlarged fil expression domain2 (enf2 )では FIL の発現領域が異常に広くなっていた。この原因遺伝子ENF2 を同定したところ、葉緑体局在タンパク質をコードしていることがわかった。enf2 変異体の葉原基において葉緑体を観察したところ、内部構造の発達に異常が見られた。そこでFIL の発現領域と葉緑体発達の関係を調べるため、エリスロマイシン処理によって野生型植物の葉緑体の発達を阻害したところ、enf2 変異体と同様にFIL の発現領域が広くなった。これらの結果から、葉原基におけるFIL の発現領域制御において葉緑体の正常な発達が必要な要因であると考えられる。
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© 2010 日本植物生理学会
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