抄録
個々の遺伝子の発現を制御している転写制御因子を同定するには、酵母ワンハイブリッド法がよく用いられる。これには、まず対象遺伝子のプロモーター解析を行ってシスエレメントを絞り込み、これらを上流領域に複数個連結したリポーター遺伝子を用いて、これに結合する転写因子をcDNAライブラリーからスクリーニングするのが一般的である。しかし成功するかどうかはライブラリーのクオリティに依存するところが大きく、またcDNAライブラリーの8割以上は転写因子以外の遺伝子で構成されているため、大規模なスクリーニングが必要であるなどの問題点も多い。そこで本研究では、転写因子のcDNAのみからなるライブラリーを作成することで、このような問題点がどの程度解決できるか検討した。その結果、線虫などでの先例と同様に、シスエレメントの絞り込みを行うことなしに、500-1000bpのプロモーター領域をそのまま用いた場合でも、従来法より100倍以上の高効率で目的の転写制御因子を同定することができた。しかし酵母を用いた方法は、偽陽性や偽陰性を生じやすいこともわかり、植物を利用した新しい方法も検討している。本発表ではこれらの方法を比較検討した結果を報告したい。