日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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イネ生葉でのPSII光障害はPSI循環的電子伝達反応を活性化する
*久保 智史増村 威宏斎藤 雄飛尼子 克己深山 浩杉本 敏男鈴木 雄二牧野 周三宅 親弘
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p. 0203

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抄録
光合成リニアー電子伝達反応 (LEF)が、光化学系I循環的電子伝達反応 (CEF-PSI)に与える影響を調べるために、我々は、PSIIが光障害を被ったイネ生葉(矮性イネ(豊雪))を用いて、CEF-PSI活性を解析した。イネ生葉が、光合成が抑制された条件下, 強光にさらされた。光処理時間の経過とともに、Fv/Fmが低下した。QY(PSII)により見積もられたLEF活性および正味の光合成速度は、光処理の時間の経過とともに低下した。また、NPQの値も低下した。一方、プラストキノンの酸化還元レベルを示すqLの値は、光処理により、増大した。さらに、PSI反応中心クロロフィルP700の酸化型の割合が、光処理により増大した。これらの結果は、PSIIの光障害によりプラストキノンおよび電子伝達系の酸化レベルが増大していることを示す。LEF活性と異なり、QY(PSI)により見積もられたPSI電子伝達活性の光強度依存性は、光処理により影響されなかった。また、QY(PSII)に対するQY(PSI)の関係は、光処理により影響されなかった。つまり、LEF活性に対するCEF-PSI活性は影響されなかった。ただし、光障害を受けた生葉ではLEF活性が低下しているので、CEF-PSIの活性は上昇していた。CEF-PSI活性が維持されるあるいは強化されるメカニズムと生理的意義を議論する。
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© 2010 日本植物生理学会
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