抄録
フラボノイド合成は、周囲の環境からのストレスや発達段階、器官、組織による違いなど、さまざまな要因によってその発現が制御されている。マメ科植物ではフラボノイド合成に関与する酵素群は多重遺伝子族を形成しており、より精密な生合成制御が行われていることが考えられる。我々はこれまでにマメ科モデル植物であるミヤコグサより、プロアントシアニジン生合成酵素遺伝子のプロモーターを活性化するMYB型転写因子LjTT2a、b、cを単離し、これらがゲノム上でタンデムに配列し多重遺伝子族を形成することを見出した。これらのアミノ酸配列は高い相同性を示すのにもかかわらず、その転写活性化能は大きく異なっていた。3つのLjTT2のN末端側のR2R3-MYBドメインとC末端側の配列を入れ替えたキメラタンパク質を使ったアッセイにより、活性の違いはLjTT2のR2R3-MYBドメインに起因することが分かった。そこでさらに、R2R3-MYBドメインの中で特に活性の低いLjTT2b特有の3アミノ酸に注目し、これらのアミノ酸に変異を挿入した変異タンパク質を細胞内で発現させ、その活性を測定した。その結果、LjTT2bの3アミノ酸をすべてLjTT2aのものに置換すると活性が高くなることから、これらの3アミノ酸がLjTT2の活性において重要な役割を果たしていることが示唆された。