抄録
ペプチドリガンドとレセプターを介したシグナリングは、植物細胞間の相互作用においても多様な役割を担うと考えられる。シロイヌナズナに32個あるCLV3/ESR-related (CLE) ペプチド遺伝子からはいくつか、分裂組織や細胞分化の制御において機能する因子がみつかってきたが、未だシグナリング機構の全貌はわからない。その様な機構を解析する上で、ペプチドの受容体装置を探し出すことは大変重要である。そこで私達は、シロイヌナズナ花粉管培養系を利用したアプローチを試みた。初めに合成CLEペプチドを添加して培養したところ、数種のペプチド存在下では花粉管がより伸長することがわかった。花粉のみ存在する培養系なので、合成CLEペプチドが花粉で発現する受容体様キナーゼに作用したと想定される。したがって次に、既知のCLEペプチド受容体に類似し、かつ花粉での発現が予想される受容体様キナーゼ遺伝子の変異体について、花粉管培養におけるCLEペプチド応答性を調べた。その結果これまでに、2種類のCLEペプチドについてそれぞれ1つおよび2つの非応答性変異体が検出された。すなわち、CLEペプチドシグナリング機構で機能する受容体様キナーゼ遺伝子候補を新たにみいだした。