抄録
維管束分化において、NAC型転写因子であるVND6、SND1/NST3は木部道管および繊維細胞それぞれのマスター因子であることが分かっている。しかし、これらの因子が制御する下流因子の詳細はわかっていない。そこで、VND6およびSND1が制御する因子を明らかにするために網羅的な発現解析を行うことにした。そのためにまず、シロイヌナズナ培養細胞を用いた系を構築した。エストロジェンにより発現誘導可能な形でVND6およびSND1を形質転換した細胞株を作製した。VND6過剰発現株では、細胞は後生木部様の二次壁を形成し細胞内容物を失った。SND1過剰発現株では、模様のない二次壁を形成した。次に、このような植物体内での細胞分化を反映した培養細胞を用いてマイクロアレイ解析を行った。その結果、VND6とSND1は主に二次壁形成に関わる因子を共通の下流因子として制御していることが分かった。また、プログラム細胞死に関わる因子はVND6のみにより制御され、リグニンモノマー前駆体の合成に関わる因子はSND1のみにより制御されることが分かった。