抄録
シロイヌナズナの側根形成は内鞘細胞の不等分裂によって開始される.この過程はSLR/IAA14を始めとするAux/IAAタンパク質と,オーキシン応答転写因子ARF7, ARF19を介したオーキシン応答性遺伝子発現によって制御されており,その下流でLBD (Lateral Organ Boundaries-domain)/ASL (Asymmetric Leaves2-like)ファミリーに属するLBD16/ASL18の発現誘導が重要なことが示されている (Okushima et al., 2007).しかし、LBD16を含む 5つのオーキシン誘導性LBD/ASLメンバー(LBD16, 17, 18, 29, 33)が側根形成部位で発現すること、およびLBD16の単独欠損変異体が顕著な表現型を示さないことから,このメンバーは重複して機能していることが示唆される.そこで,LBD16ゲノム制御下で転写抑制ドメインを融合させたLBD16を発現させたところ,側根形成開始が特異的に阻害され、内鞘細胞の分裂は観察されなかった.また,LBD16は核に局在し,側根形成開始前の内鞘細胞から発現を開始していた.このことから,LBD16を含むこれらのLBD/ASLメンバーは,転写制御を介して内鞘細胞の分裂開始に関与していると考えられる.