日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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細胞間コミュニケーションを介したan3変異体での補償作用
*川出 健介堀口 吾朗塚谷 裕一
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p. 0257

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抄録
補償作用とは、葉原基において細胞増殖能に欠損をきたした場合に、細胞肥大が昂進する現象である。この現象は、空間的に異なる場所で同時進行する細胞の増殖と分化が、統合的に制御されている可能性を示唆している。そこで私達は、この補償作用に着目し、細胞の増殖と分化をつなぐ機構の理解を試みている。これまで、サイクリン依存型キナーゼインヒビターの一種をコードするKRP2の過剰発現体では、補償作用が個々の細胞単位で進行することを明らかにしてきた。では、この細胞自律性は、葉の発生において細胞の増殖と分化をつなぐ機構に共通の性質なのか?この問いに対して私達は、KRP2過剰発現体と同じく、顕著に補償作用を示すan3変異体に関してクローン解析を行い、an3変異体でみられる補償作用の細胞自律性について検討した。
本研究では、熱処理依存的にCre/Loxが機能する系を用いて、an3背景にAN3過剰発現細胞群をキメラ状に持つ葉を誘導し、クローン解析を行った。その結果、キメラ葉では、an3細胞のみならずAN3過剰発現細胞でも異常な細胞肥大が観察された。このキメラ葉に含まれる細胞のサイズを定量的に解析したところ、AN3過剰発現細胞のサイズはan3細胞と同等であった。以上の結果から、an3変異により誘導される補償作用は、KRP2過剰発現体の場合とは異なり、細胞間コミュニケーションを介して進行していると考えられる。
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© 2010 日本植物生理学会
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