抄録
遺伝子組換え作物の実用化には、これにかかる法的規制をクリアするための様々なコストの低減と、組換え技術に対する国民理解(パブリック・アクセプタンス:PA)の促進が不可欠である。私たちは、CRES-T法や重イオンビーム照射などの最新技術を取り入れた形質改変手法の効率化により、花のモデル植物であるトレニア(Torenia fournieri)で多数の新形質花きの作出に成功する一方、これらをいち早く一般に提供するための手段として、花きの持つ色や形を損なわずに樹脂封入する体制を整備した。遺伝子組換え花きは水分を樹脂に置換する過程で不活化されるため、カルタヘナ法の規制の対象とはならず、即時流通させることが可能である。また、標本の持つ自然の色は長期間安定で、季節や時間を問わずあらゆる角度から観察することができるため、特に教材としての高い有用性を備えている。私たちは、この標本を利用した遺伝子組換え教材を20セット試作し、各種教育機関での利用を通じて活用方法や有効性、製品に対する要望等についての調査を進めている。PAの推進や事業化に必要な改良点などを踏まえた現状について報告する。本研究の一部は「農林水産研究高度化事業」、「生研センターイノベーション創出事業」および「農研機構産学官連携強化費」によるものである。