抄録
感染糸は、根粒菌が感染した根毛に形成される管状の構造で植物細胞に由来する。根粒菌はこの管状構造を通って皮層内部へ侵入し根粒を形成する。ミヤコグサalb1変異体は感染糸の伸長が抑制され、皮層への感染糸の侵入も起こらない。ALB1遺伝子がロイシンリッチリピートを細胞外ドメインに持つ受容体キナーゼ様タンパク質をコードすることを前大会で報告した。ALB1のキナーゼドメイン(KD)は活性に重要なアミノ酸残基に置換があることから、構造的にはキナーゼ活性を持たないと予測された。今回、大腸菌で発現させたALB1のKDを用いてin vitroリン酸化反応を行ったが、タンパク質リン酸化活性は検出されなかった。さらに、ATP結合部位に変異を導入してキナーゼ活性を積極的に欠失させた変異型ALB1は、野生型ALB1と同様にalb1変異体の表現型を抑圧した。これらの結果から、ALB1の機能にリン酸化活性は必要ないと結論づけた。しかし、KDを欠除したALB1はalb1表現型を抑圧しないことから、KDはALB1の機能に必須な構造であると考えられる。また、ALB1-GFP融合タンパク質を用いて細胞内局在を観察した結果、ALB1は感染糸の原形質膜に局在することが分かった。以上の結果から、ALB1は感染糸膜に局在し、キナーゼ活性非依存的に感染糸の形成を正に制御していると考えられる。