日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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シロイヌナズナの全身的抵抗性誘導に関するマイクロアレイデータの比較解析
*吉岡 洋平Most Hushna Ara Naznin百町 満朗山本 義治
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p. 0308

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抄録
植物生育促進菌類であるPenicillium simplicissimum GP17-2株は、植物根と共培養することで植物に生育促進効果をもたらす。また、GP17-2株の培養濾液はシロイヌナズナに全身的抵抗性(ISR)を誘導する。ISRには、サリチル酸、ジャスモン酸、あるいはエチレンなどの植物ホルモンを介したシグナル伝達経路が関与している。我々は、GP17-2株の培養濾液応答のマイクロアレイ解析を行った。シロイヌナズナでは現在までに、ストレス応答性、病害虫応答性、植物ホルモン応答性、栄養応答性などの遺伝子発現のマイクロアレイ解析のデータが公開されている。その中で、ISRと深く関わっている病害応答、植物ホルモン応答、過酸化水素応答ならびに傷応答とGP17-2株の培養濾液応答のマイクロアレイデータの比較解析を行った。その結果、GP17-2株の培養濾液応答はアブシジン酸応答と最も近い関係にあった。植物の先天的な免疫機構の一つとして病原菌感染時における気孔閉鎖誘導があり、気孔閉鎖誘導にはアブシジン酸を介したシグナル伝達が関係することが知られている。GP17-2株の培養濾液を根に浸漬処理した後、地上部に病原菌を接種したシロイヌナズナにおける気孔口径を調べたところ、気孔閉鎖が顕著に誘導された。この結果より、GP17-2株の培養濾液によるISRには気孔閉鎖誘導が関与することが示唆された。
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© 2010 日本植物生理学会
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