抄録
我々は東アジア、東南アジアに発生する8種のウイルス(RDV, RRSV, RBSDV (以上dsRNA), RSV, RGSV, RTYV (以上ss-RNA), RTSV (ss+RNA), RTBV(dsDNA))感染による宿主遺伝子のトランスクリプトーム解析を行っている。感染後の病徴が激しいのはRDV, RSVであり、逆に病徴が殆ど観察されないのはRTYV, RTSVであった。発現が変化する遺伝子の数は病徴の激しさと良く相関していた。遺伝子と代謝経路、転写・翻訳・修飾関連、転写因子のファミリー、ホルモン合成・応答系といった観点から整理すると、細胞周期関連の遺伝子はウイルス感染後、ほぼ全てのケースで発現が抑制されているが中でもG2=>Mに関与するサイクリンBタンパク質の遺伝子発現が抑制されていた。転写因子ではストレス、防御応答に関与すると思われるAP2-EREBP, Tify, WRKYなどの転写因子がウイルス感染後活発に動いており、WRKY遺伝子群の場合ウイルスの種類と、その挙動から新たに3つのサブファミリーに分けられることが明らかとなった。IRRIとの共同研究でRTSV, RTBV感染に感受性の宿主TN1と抵抗性の宿主TW16を用いて解析を行っている。両宿主間での比較解析結果も報告する。