日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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補色順化を制御する光受容体(CcaS/RcaE)の機能と進化
*広瀬 侑片山 光徳成川 礼池内 昌彦
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p. 0333

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抄録
シアノバクテリアは酸素発生型の光合成を行う原核生物であり、光化学系複合体の集光装置としてフィコビリソームを持つ。一部の種のフィコビリソームでは、赤色光を吸収するフィコシアニンと、緑色光を吸収するフィコエリスリンの組成が緑・赤色光に応答して調節され、補色順化と呼ばれている。我々は、フィコエリスリン含量のみが調節されるタイプの補色順化(2型)を示すNostoc punctiforme ATCC 29133において、シアノバクテリア独自のフィトクロム様光受容体(シアノバクテリオクロム)の1つであるCcaSが、CcaRのリン酸化を介してフィコエリスリンの発現調節を行なうことを明らかにした。一方、CcaSとよく似た色素結合ドメインを持つシアノバクテリオクロムであるRcaEは、フィコシアニン含量とフィコエリスリン含量の両方を調節するタイプの補色順化(3型)を制御することが示唆されている。RcaEの色素結合ドメインの解析を行ったところCcaSと同様の緑・赤色可逆光変換を示した。つまり、CcaSもRcaEも同様の光変換を示し、どちらもフィコビリソーム遺伝子群の発現調節に関わることが明らかとなった。しかし、RcaEよりもCcaSのほうがドメイン構成やシグナル伝達経路が単純である。このことは、過去にCcaS→RcaEへの進化が起こり、その結果、2つのタイプの補色順化が成立したことを示唆している。
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© 2010 日本植物生理学会
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