日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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苔類ゼニゴケを用いたフィトクロムを介する細胞応答の調節機構の解析
*保坂 将志石崎 公庸井上 佳祐片岡 秀夫大和 勝幸松永 幸大河内 孝之
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p. 0339

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抄録
フィトクロムは植物の主要な光受容体の1つである。フィトクロムを介する光シグナル伝達経路を解明するため、本研究では基部陸上植物である苔類ゼニゴケを用いた。これまでにゼニゴケフィトクロム遺伝子(MpPHY)を単離し、Mpphyが一分子種しか存在しないこと、光可逆性を備えていること、さらに1アミノ酸置換したMpphyY241Hが光可逆性を失うことを明らかにしている。さらにMpphyにより胞子発芽後の細胞分裂、無性芽からの生長、葉状体切断面における再生が促進されることを見出している。今回ヒストンのH2Bサブユニットに蛍光タンパク質を融合させることで染色体動態を可視化した株を作出し、分裂組織の形成や細胞分裂頻度の増加が赤色光依存的であることを確認した。さらに野生株及びMpphyY241H発現株について細胞の核相を評価することで、MpphyがG2期からM期の移行を正に制御している可能性を示した。またMpphyの細胞内局在解析を行い、Mpphyが赤色光により主に核へと移行すること、MpphyY241Hが光非依存的に核及び細胞質に局在することを明らかにした。さらにRNAi干渉法によるMpphyノックダウン株は野生株とは異なり、遠赤色光非依存的に生殖生長相に移行した。このように、苔類ゼニゴケのフィトクロムが主として核で機能し、細胞分裂の間接的/直接的制御を通して形態形成を制御することが示唆された。
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© 2010 日本植物生理学会
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