日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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フィトクロムによるトマト芽生えのフック巻込み ―その意義と種皮の役割―
*七條 千津子姉川 彩大西 美輪深城 英弘三村 徹郎橋本 徹
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p. 0341

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抄録
暗黒で発芽した双子葉植物の芽生えは胚軸上部にフック状屈曲を示すが、光を受けるとフックは開いて胚軸は立ち上がる。これはよく知られた現象である。しかし我々は、トマトの暗黒芽生えのフックが光によって更に巻き込むことを見出し、この反応にフィトクロムの弱光反応と極弱光反応が関与することをフィトクロム分子種欠損変異体等を用いて既に明らかにした。今回は、光によるフック巻込みがトマトだけの例外的現象ではなく種皮の堅い種子を付ける他の植物種でも見出されるので、その意義を見出すためフィールドシミュレーション実験や微速度撮影による解析を行った。その結果、1)地表近くで発芽したトマトの芽生えを完全暗黒で育てると、フックは巻き込まず種皮を付けたまま地表に現れ、その後地上で乾燥した種皮が子葉より外れなくなり成長が阻害された。2)しかしこのプロセスに光を加えると、芽生えはそのフックを巻き込み、その間に種皮を地中に脱ぎ捨てて地表に現れ、その後順調に成長した。3)このフック巻込みは、芽生えの地表への出現を遅らせた。これらのことから、光によるフック巻込みは、発芽時未熟な子葉が地中で乾燥を防ぎつつ十分成長し強固な種皮を脱ぎ捨てるのに貢献していることが推定された。またフック巻込みには、光だけでなく、種皮(胚乳を含む)の存在が必要であり、そこから供給される物質が重要な役割を果たしていると推定された。
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© 2010 日本植物生理学会
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