抄録
Cf9-interacting thioredoxin(CITRX)は、トマト葉かび病菌(Cladosprium fulvum)のAvr9に対応するトマトの抵抗性遺伝子Cf9の細胞質側ドメインに結合するタンパク質として報告されている。しかし、ゲノム情報やプロテオーム解析の結果はCITRXが緑藻から高等植物にまで保存された葉緑体局在性のタンパク質であることを示唆している。そこで、CITRXの細胞内局在を調べるため、GFPを融合させたAtCITRXをシロイヌナズナプロトプラストに一過的に発現させ観察した結果、葉緑体に局在することが分かった。また、T-DNA挿入変異体の解析から、AtCITRXの変異は葉の白色化を示すこと、また色素体内の光合成遺伝子群の転写量の大幅な減少を引き起こすことが分かった。CITRXは、シロイヌナズナとシロガラシの色素体転写活性画分(pTAC: plastid transcriptional active chromosome)に存在していることが報告されており、これらのことからもCITRXの主要な役割は葉緑体遺伝子発現制御にあることが示唆された。現在、Yeast two hybrid法によるCITRX結合因子の探索を行なっており、他のpTACタンパク質や色素体分化に関わるタンパク質が同定されている。本発表ではそれらの解析も含め報告する。