抄録
アラビノガラクタンプロテイン(AGP)は高等植物の細胞間マトリックスや細胞膜に存在している。AGPの糖鎖の基本骨格はβ-3,6-ガラクタンで、側鎖を構成するβ-1,6-結合したGal残基にα-L-Arafやウロン酸等が分岐結合している。しかしながら、糖鎖構造とAGPの様々な生理機能の相関性は不明のままである。我々は今回、AGPのL-Ara残基の存在様式に着目し、その糖鎖構造を調べた。
ダイコン成根AGPにエキソ-β-(1->3)-ガラクタナーゼを作用させて糖鎖を断片化し、生じたオリゴ糖をクロマトグラフィーで分画した。オリゴ糖の構造をMALDI-TOF/MS、MS/MS解析、NMR、メチル化分析、逐次酵素分解、等で調べた。L-Araを含むオリゴ糖の中で最も含量が高いのは、1分子のL-Araと2分子のGalと1分子の4-O-メチル-グルクロン酸(4-Me-GlcA)から成る酸性4糖であった。その構造はβ-4-Me-GlcA-(1->6)[α-L-Araf-(1->3)]-β-Gal-(1->6)-Galであった。酸性5糖は、酸性4糖のL-Ara残基に、L-Araがもう1残基(1->5)-結合で連続して付加した構造であった。一方で、2つのGal残基にそれぞれ1残基のL-Araが結合した構造も認められた。