抄録
ミオシンは,アクチン繊維上を滑る分子モーターである.植物は独自のクラス(ミオシンVIII,XIおよびXIII)を進化させ,その中のミオシンXIは植物に特徴的な原形質流動を引き起こすと考えられている.われわれは,13種類のアイソフォームから成るシロイヌナズナのミオシンXI の中から,小胞体流動に関わる主要な因子としてXI-Kを同定している.XI-Kを含むミオシンXIの多重変異体では,小胞体流動の抑制に加えて小胞体の形態や分布に異常が観察された.興味深いことに,この異常はアクチン脱重合剤で処理した細胞の小胞体と酷似していた.そこで,これらの多重変異体におけるアクチン繊維束を野生型と比較した.野生型の子葉葉柄細胞では,アクチン繊維束が細胞の長軸方向に発達し,そのアクチン繊維束に沿って小胞体の活発な流動が観察された.一方,多重変異体の細胞では,アクチン繊維束の配向がランダムで長軸方向に沿っておらず,小胞体の分布とも相関がみられなかった.以上の結果から,ミオシンXIは細胞内におけるアクチン繊維束の正常な配向に必要であることが示された.ミオシンXIによって駆動される小胞体流動とアクチン繊維束の配向の関係について議論したい.