抄録
多くの水生光合成生物は無機炭素濃度が低下しても,これを効率良く固定する機構(無機炭素濃縮機構;CCM)をもつ。緑藻クラミドモナスでは,このCCMの発現制御に主要な役割を果たす因子としてCCM1/CIA5が知られており、細胞内で複合体として存在する。本研究では,この複合体成分を明らかにすることを目的とした。CCM1-FLAG発現株を高CO2条件(5%CO2;HC)および低CO2条件(0.04%CO2;LC)で培養し、抽出した可溶性タンパク質からFLAGペプチドアフィニティーカラムを用いてCCM1-FLAG複合体を精製した。これをin solution digestion法によって断片化し,LC-MS/MS分析法により相互作用因子および翻訳後修飾基の探索を行った。これまでに見出されていたタンパク質CBP1およびグルタミン酸脱水素酵素様タンパク質GDHL2以外に,新たにGDHL1が見つかった。これらのタンパク質は、HC/LC両培養条件の精製サンプルにおいて共に存在することがわかった。さらにCCM1のペプチド断片において3ヵ所のリン酸化部位が見つかった。GDHL1/2の構造と機能ならびにCCM1のリン酸化部位について考察する。