日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
会議情報

シロイヌナズナ葉緑体におけるリンゴ酸バルブの機能強化
*山本 亜矢木下 浩武川崎 通夫三宅 博谷口 光隆
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 0505

詳細
抄録
葉緑体内包膜に存在する2-オキソグルタル酸/リンゴ酸交換輸送体(OMT)は,ジカルボン酸輸送体と協調して炭素代謝と窒素代謝を仲介するとともに,ストロマおよびサイトソルのNADP-リンゴ酸脱水素酵素(MDH)アイソザイムと協調してリンゴ酸バルブを構成する二機能性の輸送体である.リンゴ酸バルブは,環境ストレス下でストロマ内に蓄積する過剰還元力を排出する圧力弁として機能するばかりでなく,通常でもストロマ還元力をサイトソルの硝酸還元酵素などに供給している.本研究では,シロイヌナズナのOMTおよびNADP-MDHの発現量を増やしてリンゴ酸バルブの機能を強化させ,環境ストレス耐性能や硝酸同化能に向上がみられるかどうかを調べた.単離葉緑体のオキサロ酢酸依存的なリンゴ酸生成・排出能は野生株に比べOMT/NADP-MDH二重過剰発現株で有意に高く,形質転換体ではリンゴ酸バルブ能が向上していると判断した.二重過剰発現株を通常条件下で生育させたときの成長は野生株と顕著な差は見られなかったが,リンゴ酸や2-オキソグルタル酸などの有機酸および一部アミノ酸含量の増大が見られた.また,強光照射に伴う葉のFv/Fm値の低下が過剰発現株で抑えられていた.したがって,過剰発現株では代謝機能の改変が起こるとともに,光阻害回避能が向上していると考えられる.現在,硝酸同化活性を測定しており,合わせて報告する予定である.
著者関連情報
© 2010 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top