日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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植物が独自に獲得したDNAチェックポイント機構の解明 ~新規転写因子SOG1を中心にした解析~
*愿山 郁Britt Anne真木 寿治梅田 正明
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p. 0563

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抄録
DNAチェックポイントとは、ゲノム上のダメージや複製フォークの進行の阻害といったゲノム上の問題を感知し、直ちに細胞周期を停止させる仕組みである。このチェックポイント機構が機能しなければ、ゲノムが正確に複製される前に細胞分裂が生じてしまうため、ゲノムの欠損や転移などといった染色体異常が生じ、細胞を正常に維持出来なくなる。植物は固着性生活を営んでおり、そのゲノムは常に紫外線などのダメージにさらされている。この事からも植物にとってDNAチェックポイントは大変重要であると考えられる。そこで本研究では植物のDNAチェックポイント機構に関与する遺伝子として新たに単離された転写因子SOG1に注目し、植物がもつ独自のチェックポイント機構を解析する事を目的としている。シロイヌナズナではガンマ線の照射によって100以上の遺伝子発現が誘導されることが報告されているが、驚くべき事にその遺伝子誘導のほとんどがSOG1に依存していた。さらにSOG1はガンマ線照射後の細胞周期の停止の維持やゲノムの安定性に重要であることも明らかになった。またSOG1の発現部位が茎頂分裂組織や根端分裂組織、そして側根原基といった分裂組織に特化していたことなどからも、SOG1は活発に分裂している細胞がDNAダメージを受けた場合、そのシグナルを下流に伝達する過程において重要でかつ中心的な役割を担っている転写因子であると考えられる。
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© 2010 日本植物生理学会
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