抄録
近年、植物のアスコルビン酸 (AsA) 生合成はD-マンノース/L-ガラクトース経路を主要経路とすることが明らかにされたが、生合成調節機構に関してはほとんど未解明の状況である。本研究はAsA生合成の分子機構解明を最終目的に、AsA応答遺伝子の探索と解析を行った。シロイヌナズナAsA欠乏変異体vtc2-1に対し、光条件下で5 mM L-ガラクトノ-1,4-ラクトン (L-GalL)を与え、AsAレベルが十分に増加した16時間後の葉からRNAを抽出し、マイクロアレーにより発現変動遺伝子を探索した。L-GalL未処理のコントロールに対して4倍以上に発現上昇を示した14遺伝子のうち、定量的PCRにより再現性が高かった2遺伝子、アスパラギン酸エンドペプチダーゼ(ASP)およびZnフィンガープロテイン、を選抜してさらに解析を進めた。両遺伝子ともL-GalLおよびAsAに対して顕著に発現レベルが増加すること、また葉中のAsAレベルの変動と相関して明暗応答性が観察された。ASP遺伝子の転写開始点から上流約2kbpの領域をクローン化し、ルシフェラーゼのルミノイメージングによりプロモーター活性を評価した。その結果、ASP遺伝子は、定量的PCRの結果を良く反映し、L-GalLおよびAsAに対して特に週齢の若い葉において顕著に発現誘導されることが示された。