抄録
植物の水輸送は、光環境によって調節される。多くの植物のアクアポリンの遺伝子発現が光条件の影響を受けること、根の水透過性がアクアポリンの発現と相関して日周変動することから、その輸送調節の一端はアクアポリンが担っていると考えられている。シロイヌナズナの根では、暗順応処理によりアクアポリン遺伝子の転写産物量が増加する。中でも、液胞膜アクアポリンTIP2;2遺伝子は、暗処理による誘導性が高く、フィトクロムAによる制御を受けていることが示唆されているが、その光応答の仕組みの詳細も機能も明らかになっていない。そこで、TIP2;2の光応答メカニズムやその機能を調べるために、TIP2;2 promoter-TIP2;2-GFP遺伝子導入植物を作製し、まずその局在を解析した。その結果、TIP2;2-GFPの蛍光は根の発達の進んだ領域で観察された。発達の進んだ領域では、皮層と内皮で最も発現量が多く、表皮細胞や根毛などでも発現していたが、根端分裂組織や側根原基などでは発現が観察されなかった。また植物を暗順応させると、GFPの蛍光が劇的に明るくなったことから、mRNAの変化と同様にTIP2;2タンパク質量も暗所で増加することが示唆された。この暗順応処理によるTIP2;2の増加は、暗所において液胞膜上のチャネルを介した水やその他の溶質の輸送の必要性が増すことを意味しているのかもしれない。