抄録
FKF1 (Flavin-binding, Kelch repeat, F-box protein 1)は、シロイヌナズナの青色光受容体である。FKF1はLOV (Light-, Oxygen-, Voltage-sensing) と呼ばれる光受容ドメインを一つもち、長日植物の開花制御に関与している。LOVドメインは発色団としてフラビンモノヌクレオチド(FMN)を1分子非共有的に結合している。LOVドメインの基底状態(D450)が青色光を吸収すると、FMNとシステインとの間に一過的に共有結合が形成される(S390中間体)。このS390が形成される過程は、まだ完全に解明されてはいない。
我々はFKF1-LOVの光反応を低温紫外・可視分光法を用いて測定した先行研究により、150K以下の温度領域ではS390の形成と共に、新規の光反応生成物(Z370)を形成が確認された。スペクトルを解析からZ370はフラボタンパク質のアニオンラジカル状態に似ていることが解かった。
今回、Z370がアニオンラジカル状態であることを、電子スピン共鳴法(EPR)および電子核二重共鳴法(ENDOR)により確認した。本研究はLOVドメインの光反応においてアニオンラジカル状態の存在を実証した初の例であり、この結果よりLOVドメインがS390を形成するスキームを議論する。