抄録
我々はグラム陰性細菌の細胞壁構成成分であるリポ多糖(LPS)がイネ培養細胞にプログラム細胞死を含む防御応答を誘導すること1)、また単独では防御応答を誘導しない様な低濃度で前処理することで後から処理したキチンオリゴ糖に対する防御応答を増大させるPriming活性を持つことを明らかにしてきた。さらに、最近の研究によってこのPriming活性が新規の遺伝子発現や植物ホルモンの蓄積に因らない活性であり、むしろLPSとキチンオリゴ糖のシナジー効果としてとらえるべきことを見出している。
一方、LPSの機能部位に関しては、動物の先天性免疫では分子中のLipid A部分が認識されることが報告されているが、植物が認識する構造は明らかでない。そこで今回、LPS合成系に変異を持つ微生物から抽出され、構造の明らかなLOSを用いることで2)、植物によって認識される構造を解析した。LOSがLPS同様の活性を示すことを確認したのち、穏和な加水分解によってLipid Aとコア糖鎖に分解し、それぞれの活性を調べた結果、イネにおけるLPSの生物活性はLipid Aによって担われていることが明らかになった。
1)Desaki, Y. et al., Plant Cell Physiol., 47, 1530 (2006). 2)Alba, S. et al., ChemBioChem, 9, 896 (2008).