抄録
イネのキチンエリシター受容体として同定されたLysMドメイン含有膜タンパク質CEBiP(Chitin Elicitor Binding Protein)は,キチンオリゴ糖に結合することは明らかになっているが,結合に重要な構造は特定されていない。こうした解析を行うための実験系として,ある種のタバコBY-2細胞がキチン応答性を欠失し,また CEBiP様タンパク質を欠くことに着目し,CEBiPの構造・機能解析を行う発現系として有用であると考えた。結合特性の解析にはnon-RIで解析可能なビオチン化キチンオリゴ糖を用いた親和性標識実験を用いた。実験系を評価するため,イネCEBiPを過剰発現させたBY-2細胞の膜画分を用いてキチン結合性の評価を行ったところ、発現したCEBiPの結合特性がイネ由来のものと同様であることが認められたことから、構造・機能解析に利用可能であることが示された。CEBiPの構造機能活性相関の解析を行うにあたって、CEBiP分子内には2つのLysMモチーフが存在し、キチンオリゴ糖への結合に重要であることが推測されている。そこでイネCEBiPのLysMモチーフのデリーションクローンをBY-2で発現させ、解析したところその一つにおいてキチン結合能が消失した。現在、さらに検討をすすめるとともに、種々のCEBiPホモログのキチン結合性に関してもこの系を用いた解析を行っている。