日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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ジビニルクロロフィルに置換したSynechocystis sp. PCC 6803光化学系IIの解析
*日下部 勇人岡崎 茂俊長尾 遼伊藤 寿田中 歩三室 守鞆 達也
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p. 0747

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抄録
C3位にビニル基を持つ、モノビニル(MV)-クロロフィル(Chl)は光合成において最も普遍的に存在するクロロフィルである。その例外の一つとして、海洋性のシアノバクテリアであるProchlorococcus spp. が存在し、C3およびC8位にビニル基を持つジビニル(DV)-Chl a を結合している。本研究では、形質転換可能なシアノバクテリアSynechocystis sp. PCC 6803のslr1923遺伝子を欠損させ、全てDV-Chl a となった異性株から光化学系II (DV-PS II)を単離精製し、その性質を解析した。その結果、DV-PS IIは光照射による退色速度がMV-Chlを結合したPS IIより速いことを観測した。また、光照射においてD1タンパク質の分解が促進された。D1タンパク質分解産物の分子量からアクセプター側で光阻害が促進されているものと推測される。この光阻害は一重項酸素に起因すると考えられているため、我々は近赤外領域において、光照射にともない発生する一重項酸素の測定を行った。その結果、MV-Chl a は溶液中においてDV-Chl a より一重項酸素の消去効率が大きいことを明らかにした。DV-PS IIにおける一重項酸素の発生効率においても、現在検討を行っている。本大会ではこれらDV-PS IIの性質について議論する。
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© 2010 日本植物生理学会
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