抄録
好熱性シアノバクテリアThermosynechococcus(T.) elongatusから単離した光化学系I(PSI)反応中心複合体をアルミナ-シリカ多孔体薄膜(NAM)内のnmサイズのシリカ孔中に導入した。NAMは、アルミ基盤の陽極酸化により、マクロ細孔をもつ多孔体アルミナを生成し、その内部にさらに直径50 nmのシリカメソ多孔体多数を導入し細孔を形成した複合メソポーラス膜である。直径4.3 cm、厚さ60 μmの円盤形状薄膜で、細孔は膜面垂直方向に貫通している。カタラーゼを導入すると、耐性が向上することが報告されている[1]。
シアノバクテリアPSIは、直径21 nm、厚さ9 nmの3量体を形成し、その中にクロロフィル約300分子を含む巨大な膜タンパク質色素複合体である。導入したPSIは膜表面には吸着せず、顕微分光から殆ど細孔内部に存在する事を確認した。光化学活性は保持され、細孔内部のPSIは、薄膜表面に対して、膜面垂直方向が平行に配向(シリカの壁にPSIの膜内露出部分が接触する形で配向)していることがわかった。
発表ではNAMに導入し配向させたPSIの性質、光反応、電子伝達体の光還元で細孔内部にどのような電場分布が現れるかを議論する。
[1] T. Itoh et al. J. Mol. Catal. B: Enzym. 2009, 57, 183-187.