日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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鉄欠乏オオムギ葉のチラコイド膜における光化学系II集光性クロロフィル結合タンパク質の挙動解析
*齋藤 彰宏樋口 恭子園池 公毅
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p. 0768

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抄録
鉄欠乏条件では、鉄を多量に保持する光化学系I(系I)量を維持することができず、光化学系II(系II)は過還元状態になって光阻害を起こしやすい。鉄欠乏に強いオオムギ品種エヒメハダカの新葉では、系IIの主要な集光性アンテナタンパク質であるLhcb1量を維持しながら、光阻害を回避することができる。これまでに、Lhcb1の維持が鉄欠乏条件下における過剰光の熱放散(NPQ)に貢献することを見出していた。そこで、Lhcb1に依存した鉄欠乏特異的なNPQ誘導機構を明らかにする目的で、チラコイド膜タンパク質の解析を行った。ショ糖密度勾配超遠心解析により、鉄十分条件に比べて鉄欠乏オオムギ葉では特に単量体のLhcb1が増加することが明らかになった。また、チラコイド膜をグラナ画分とストロマラメラ画分へ分画したところ、鉄欠乏条件下ではグラナのみならずストロマラメラにもLhcb1が多く存在することが明らかになった。その一方で、77 Kクロロフィル蛍光測定では、系I由来のピークが鉄欠乏により青色光側へわずかにシフトしており、系Iと結合するアンテナ量はむしろ減少することが示唆された。これらのことから、Lhcb1は系IIから脱離して系I側へと移動するものの、単純に系Iに結合してエネルギー分配を調整するのではなく、系IIや系Iの周辺部位に位置しながら熱放散に特化した立体配置を取る可能性が示唆された。
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© 2010 日本植物生理学会
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