抄録
植物の成熟花粉の表面は、エキシンと呼ばれる外郭構造によって覆われている。エキシンは植物種によって特徴的な構造を持ち、雄性配偶体の保護、乳頭細胞による同種・異種の花粉認識など、植物の生殖において重要な役割を担うと考えられている。しかし、その形成機構はまだよくわかっていない。EMS処理をしたシロイヌナズナのスクリーニングによって得られたkns7 変異体は、野生型で見られるエキシンの網目構造が不連続になるという表現型を示した。Auramine Oを用いてエキシンの形成過程を観察した結果、kns7 変異体の網目構造は、エキシン形成の早期から不連続であることがわかった。またkns7 のヘテロ接合体のエキシンは正常であったことから、原因遺伝子KNS7 は2倍体の細胞すなわち花粉母細胞またはタペート細胞で発現すると考えられた。エキシンはその主要な構成成分であるスポロポレニンが小胞子自身と葯壁のタペート細胞から放出され、エキシンの骨組みとなるプロバキュラに沈着することで成長すると考えられている。従ってKNS7 遺伝子は、スポロポレニンの生合成や分泌、あるいはプロバキュラの形成に関与すると推定された。マップベースクローニングの結果、KNS7 の候補遺伝子を同定することができた。