抄録
ヒメツリガネゴケは相同組換えによる遺伝子ターゲティングが可能なので、逆遺伝学の優れたモデル植物として活用されている。しかし、遺伝子重複が種子植物より多いことから、二重または三重の遺伝子破壊を行わないと野生株と異なる表現型が出ない例が多く報告されている。この問題点を克服するため、我々は人工マイクロRNA(amiRNA)により遺伝子ファミリーを同時に発現抑制できる系の開発を試みた。いくつかのマイクロRNAは進化的に保存され、シロイヌナズナのmiR319aはヒメツリガネゴケにも存在する。シロイヌナズナではmiR319aを改変することで効果的に遺伝子発現を抑制することが報告されている(Schwabら2006年)。本研究では先ず、ある核移行タンパク質にGFPを融合させたキメラ遺伝子をヒメツリガネゴケに導入し、安定GFP発現形質転換株を作製した。次にGFPの発現抑制を目的としたamiRNAを設計し、アクチンまたはCaMV35Sプロモーターに連結したプラスミドを作製した。これらのプラスミドをパーティクルボンバードメント法でGFP発現株に導入してGFP発現が一過的に抑制されるかどうかを調べた。さらに、ヒメツリガネゴケゲノムのニュートラルサイトにamiRNAを導入した安定形質転換体を作製し同様の観察を行ったのでこれらの結果も合わせて報告する。