抄録
我々はリグナンの効率的な高生産系の確立を目指し、基質リグナンとなるピノレジノールを多量に含有するレンギョウ葉の培養細胞を活用したリグナン生産を検討した。チョウセンレンギョウの葉から樹立した培養細胞では、ピノレジノールとマタイレジノールの配糖体が主なリグナン成分であった。更にピノレジノール量を増大させるため、ピノレジノールを代謝する酵素の一種、PLRの発現をRNA干渉法(RNAi)で抑制したところ、マタイレジノール配糖体を完全に消失させ、また、野生型培養細胞と比較して約20倍以上のピノレジノール配糖体を蓄積することができた。さらに、PLR-RNAi、および、ゴマでピノレジノールからフロフラン型リグナンを生合成する酵素、CYP81Q1を導入した組換えレンギョウ葉培養細胞では、ピノレジノール配糖体が高蓄積されるとともに、ゴマ由来のフロフラン型リグナンの生成を検出できた。以上の結果から、レンギョウ葉培養細胞は人工的にリグナンを生産させるための有用なツールであることが示された。また、本研究成果は、組換え培養細胞により異種植物由来リグナンの生産に成功した初めての例である。