抄録
セスキテルペンラクトン (STL) はキク科植物に主に見られる二次代謝産物である。多くのSTLが持つ生理学的、薬理学的な重要性にも関わらず、それらの生合成に関する分子レベルでの研究はほとんど進んでいない。そこで我々はSTL研究の第一歩として、最も単純な構造を持つSTLの一種であり、多様なSTLの前駆体であると考えられているcostunolideの生合成解明に取り組む事とした。
Costunolideはセスキテルペノイドの共通前駆体であるファルネシル二リン酸(FPP)からgermacrene Aとgermacrene A acid (GAA) を経由して生合成される。これまでに、FPPからgermacrene Aへの反応を行うテルペン合成酵素遺伝子が単離されており、最近当研究室から単離されたgermacrene A oxidaseはgermacrene A からGAAへの3段階の酸化反応を行う事が明らかとなった。最終段階であるGAAからcostunolideへの反応はP450が行う事が報告されている為、その遺伝子単離を現在目指している。具体的には、ヒマワリのトライコームESTライブラリーやレタスの豊富なEST情報を利用している。また、目的P450の基質となるGAAは入手が困難であるが、FPP高生産改変酵母中でGAA生合成酵素遺伝子群を発現させる事により、その調製に成功した。