抄録
プロテイン ホスファターゼ2C (PP2C) はプロテイン セリン/スレオニン ホスファターゼ ファミリーに属し、リン酸化カスケードのキーエンザイムとして機能する。植物のPP2Cは他の真核生物と比較して非常に大きなファミリーを構成している。シロイヌナズナのPP2Cは一部を除き、A~Jの10グループに分類される。このうちAグループのPP2Cは植物ホルモンの一つであるアブシジン酸 (ABA) のシグナル伝達経路の負の制御因子として知られており、種子の発芽やストレス応答など様々な生理現象に関与している。その一部のABI1等は、最近単離されたABA受容体であるPYR/PYLsと直接、相互作用することが報告されている。このようにAグループのPP2Cは比較的、解析が進んでいるが、他のグループのPP2Cについては遺伝学的・生化学的な解析がほとんどなされていない。
我々はシロイヌナズナのPP2Cのうち、AtPP2CF1と名付けたグループEに属しABA応答性を示すPP2C (At3G05640) の解析を行った。AtPP2CF1 の発現の組織特異性や細胞内局在の解析により、AtPP2CF1 は維管束、孔辺細胞あるいは根端で発現し、核と細胞質で機能していることが示唆された。現在、AtPP2CF1の酵素活性の解析を行っており、それについてもあわせて報告したい。