日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
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青色光に依存した気孔開口における孔辺細胞葉緑体の関与
*渡辺 治隆土井 道生島崎 研一郎
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p. 0904

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抄録
気孔は強い赤色光の存在下でシグナルとしての弱い青色光に応答して開口する。青色光は細胞膜H+-ATPaseを活性化し、H+を細胞外に放出させ細胞膜を横切る電位差を増大させる。この膜電位の過分極は電位依存性の内向き整流性K+チャネルによるK+の取り込みを促進し、孔辺細胞内に蓄積したK+は主にリンゴ酸によって電気的なバランスが保たれる。赤色光は孔辺細胞葉緑体の光合成電子伝達反応を駆動し、細胞膜H+-ATPaseにATPをリンゴ酸生成に還元力を供給すると考えられるが、直接的証拠は得られていない。本研究では赤色光の役割を解明するため、様々な条件下でリンゴ酸と気孔開口を測定した。赤色光と青色光は孔辺細胞におけるリンゴ酸の蓄積と気孔開口に相乗的に作用しており、この両方が光合成電子伝達の阻害剤3-(3, 4-dichlorophenyl)-1, 1-dimethylureaによって阻害された。また、H+-ATPaseの阻害剤であるvanadateによっても阻害された。これらの結果は青色光によって誘導されるリンゴ酸の蓄積と気孔開口反応に、孔辺細胞葉緑体の電子伝達反応で生成したATPや還元力が寄与することを示している。
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© 2010 日本植物生理学会
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