抄録
私たちはこれまでに青色光受容体であるクリプトクロムをイネから3種類(cry1a, cry1b, cry2)単離し、それらが青色光下で幼葉鞘、葉鞘、葉身の伸長抑制、葉身の傾斜拡大に関与していることを明らかにした。
葉身の傾斜は群落の光受容効率に大きく影響するため、その制御機構の解明は重要であるが、青色光依存的な葉身傾斜に関与する因子は今まで不明であった。O.glumaepatulaと台中65号の染色体部分置換系統群を九州大学より分与していただき、それらを青色光下で生育し表現型を解析したところ、WTよりも顕著に第2葉身の傾きが大きくなる系統(IL113)が見出された。一方、青色光下での伸長抑制反応や赤色光、遠赤色光に対する光応答反応は台中65号と同様であったことから、IL113は青色光依存的な葉身傾斜する反応だけが過敏になっていることが分かった。IL113以外の系統は青色光下で葉身の傾きが大きくなる表現型を示さないことから、IL113系統でのみ置換されているO.glumaepatulaのゲノム断片の領域である第4染色体の長腕部分に原因遺伝子があることが示唆された。現在、候補領域を460 kbにまで絞り込んだ。
また、青色光下での葉身の傾斜する過程をモニタリングした結果や、疎植、密植条件でのIL113と台中65号の農業形質を測定したので、それらについても報告する。