日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
第51回日本植物生理学会年会要旨集
会議情報

乾燥ストレス応答におけるアントシアニン量の調節機構と生理作用の解析
*岡本 昌憲田中 真帆諸澤 妙子南原 英司関 原明
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 0929

詳細
抄録
植物は乾燥ストレスに曝されることでアントシアニンを蓄積することが知られている。植物ホルモンのアブシジン酸(ABA)欠損変異体や非感受性変異体では、乾燥ストレス後のアントシアニンの蓄積量が減少しており、逆にABAを過剰蓄積する変異体では、その蓄積量が増加していた。フラボノイド合成酵素群やそれに関わる転写因子群の遺伝子発現がABA欠損変異体や非感受性変異株でもその誘導が認められるが、ABA過剰蓄積変異体では相乗的に誘導されていた。この結果から、乾燥ストレス時におけるアントシアニン量の蓄積は、乾燥ストレスおよびABAを介した制御機構の両方によって制御されていることが示唆された。一方で、アントシアニンは抗酸化物質として知られているため、乾燥ストレス時における植物体内で発生する活性酸素の除去に関わっているかを検証した。ABA欠損変異体では、乾燥ストレス後の活性酸素の蓄積が顕著に観察されたのに対して、ABA過剰蓄積変異体ではその蓄積が抑えられており、アントシアニンの蓄積量と負の相関を示した。さらに、アントシアニンを過剰に蓄積する形質転換体において乾燥ストレス試験を実施した結果、乾燥ストレス耐性が顕著に向上していた。現在、アントシアニンの生合成変異体でストレス耐性試験と活性酸素の蓄積量に関して解析を進めている。この結果を総合して、乾燥ストレスに対するアントシアニンの生理作用を議論したい。
著者関連情報
© 2010 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top