抄録
陸生ラン藻の類縁株である Anabaena sp. PCC7120は耐乾燥性研究に有用なモデル生物であり、DNAセグメントアレイ解析により見出された乾燥応答遺伝子を遺伝子破壊で解析し、窒素固定条件(窒素飢餓条件)で耐乾燥性能に関与することを見出した。遺伝子情報をデータベースで検索した結果、複数のストレス応答遺伝子が含まれていたことから、これらの遺伝子が乾燥等の極限環境下で起こる細胞内外の現象に対応するために誘導されていると考えられた。
そこで、窒素固定時の耐乾燥性能を利用した環境改善といった応用が可能な材料として、耐乾燥性で窒素固定可能な陸生ラン藻 Nostoc communeの単離を進め、無菌化した。これは上記のラン藻の類縁株であり、細胞外多糖を多く含むことから、遺伝子解析だけでなく植物栽培に必要な根の成長、窒素源の供給だけでなく、無菌化されているので食品等様々な応用が期待される。植物に必要とされる窒素の供給源としてラン藻マットを使用することが可能かを検討する目的で、ラン藻マットでの植物栽培研究を進め、成長阻害が起きないことを確認したが、十分な成果を得るには複数の植物による栽培実験、陸生ラン藻の大量培養系が必要であり、複数の植物での結果についても報告する予定である。