抄録
近年、低分子化合物を用いたケミカルバイオロジー、ケミカルジェネティクスにより多くの生命現象が明らかにされつつある。この手法は生物種を問わず利用でき、冗長性や致死性により表現型が得られない遺伝子の機能を見いだす事が可能である。一方、その標的因子の探索は生化学的手法を用いる場合、困難である事が多い。私たちはこれまでにヒメツリガネゴケの幹細胞化過程を阻害する化合物(RIN)を単離しており、その次なる展開としてRINが直接標的とする因子の同定を、分子間相互作用を測定する水晶振動子マイクロバランス(QCM)とT7ファージディスプレイを合わせた手法を用いて試みている。まず、既に相互作用をすることが報告されているブラシノステロイド合成阻害剤Brz2001とブラシノステロイド生合成酵素AtDWF4を用いて、この手法の有効性を調べた。その結果、Brz2001ビオチン化誘導体とAtDWF4のC末端領域を発現させたT7ファージの間でQCM法による相互作用が確認された。続いて、ヒメツリガネゴケの幹細胞化過程を阻害する化合物(RIN)の標的因子を探索するために、ヒメツリガネゴケの均一化cDNAを作成し、それを用いてT7ファージライブラリーを作製した。現在、このライブラリーとRINのビオチン化誘導体を用いて標的因子の探索を行っており、本大会ではこの結果と手法の有効性について議論したい。