抄録
近年、植物科学の世界においてもメタボロミクスを用いた研究が飛躍的に進歩し重要な役割を占めるようになった。メタボロミクス研究において、分析データからの物質同定や分析結果の生物学的意味の解析を行う上で、化合物データベースや代謝経路データベースなどの化合物を核とした統合的なデータベースは不可欠である。従って、植物メタボロミクス研究においても、代謝化合物を鍵とした統合データベースの整備は重要であるといえる。
筆者らの研究室は、文科省統合データベース事業に医薬品・化合物データベースの統合化を担当する分担機関として参画しており、その成果をゲノムネット化合物データベースとして公開している。本データベースでは、ゲノムネットを核として、筆者らの研究室が以前から構築しているKEGGの化合物情報(KEGG LIGAND)と国内外の化合物・医薬品関連情報(KNApSAcKなど)を統合的に検索可能である。また、ゲノムネット計算ツールとして、ケミカル情報解析ツールも公開している。さらに、ゲノムネット化合物データベースはKEGGとも高度に連携しており、化合物検索から目的の化合物が関係する代謝経路(ネットワーク情報)や酵素(配列情報)などに容易に到達でき、他のオミックスデータと組み合わせた解析にも利用できる。今回、植物研究の観点から、ゲノムネット化合物データベースと関連ツール群の最新状況について紹介する。