抄録
種特異的分子マーカー(SSM)は生物多様性や生物間相互作用を研究する上で強力なツールであるが、遺伝子情報が少ない植物種でSSMを作製することは煩雑な作業を伴う。SSMをDNAアレイ法を用いて効率よく取得する事を目的として以下の研究をおこなった。
セイヨウアブラナ、カラシナ、アブラナのcDNAを蛍光ラベルし、アフィメトリクス社のシロイヌナズナDNAアレイ(ATH)を用いて解析した。DNAアレイのシグナル強度が種間で10倍以上異なる遺伝子を416個選抜した。さらに、シグナル強度の分散が3種間で大きいものから順に192遺伝子座を選び、アフィメトリックス社より提供されている情報からPCRプライマーを設計した。設計したプライマーを用いて、シロイヌナズナ、セイヨウアブラナ、カラシナ、アブラナのDNAをテンプレートとしてPCRをおこなった。アニーリング温度を50℃、55℃、60℃の3条件でおこなった。その結果、44遺伝子座ではシロイヌナズナのDNAをテンプレートにしてもDNAの増幅が見られなかった。4種類すべてで増幅されたのは53遺伝子座であった。このうち43遺伝子座の増幅されたDNAの塩基配列を決定し、3種を比較したところ、少なくとも2種間で塩基配列の変異が存在した。以上の結果、SSMの探索には、DNAアレイを用いることが有効であると考えられる。