抄録
Botryococcus brauniiは光合成により大気中の二酸化炭素を固定し、石油に似た炭化水素成分を有するオイルを生産する。B. brauniiが産出するオイルは石油代替資源となる可能性を秘めているが、未だ実用化には至っていない。実用化に向けてB. brauniiの遺伝子資源の利用は有効であると考えられるが、この生物種に関する遺伝子情報は非常に少なく、その大部分は系統分類に用いられたrRNA遺伝子の塩基配列である。そこで、我々はB. brauniiで発現している遺伝子に関する情報を網羅的に得るためにEST解析を行った。分離培養した144の無菌株のうち増殖能および炭化水素生産能の優れた国内産の3系統(BOT70、BOT22、BOT88-2)を材料とした。BOT70についてはオリゴキャップ法により作成した全長cDNAライブラリーからランダムに選んだ11904クローンの5’末端をシーケンスした。これにより、2897個の独立した遺伝子の塩基配列を得た。BOT22およびBOT88-2については、断片化したcDNAを無作為にシーケンスすることにより、それぞれ209429リードおよび185936リードの塩基配列を得て、15517個および15145個の独立した遺伝子の塩基配列を得た。現在は、これらのEST解析結果に基づきB. brauniiにおける炭化水素生合成経路の解明に取り組んでいる。