抄録
植物培養細胞は細胞学的・生化学的・分子生物学的な研究に広く利用されている重要なリソースである。理化学研究所バイオリソースセンター実験植物開発室では、様々な培養細胞株の収集・保存・提供事業を実施している。
モデル植物シロイヌナズナの培養細胞は広範な用途での利用が期待されるが、実験植物開発室から提供可能な細胞株は少ない。そこで、新規細胞株の樹立を試みた。エコタイプCol・Ler・Wsの本葉に由来する複数の懸濁培養細胞株を得た。これらの細胞株は異なる特性を保持していた。また、安全で効率的な維持のために超低温保存を検討した。その結果、すべての細胞株を液体窒素保存できることが確認された。今後、細胞株の提供とともに、詳細な特性情報を公開する予定である。
実験植物開発室では高品質なリソースの提供および特性情報の整備を推進している。培養細胞の特性解析・品質管理のためには標準的な検査技術の開発が不可欠である。培養細胞の安定性の実態を明らかにするために、シロイヌナズナ懸濁培養細胞株をモデルとしていくつかの特性をモニタリングしている。さらに、トランスクリプトーム解析による評価を検討する予定である。