抄録
野生植物および園芸植物の大多数の花色はアントシアニンとカロテノイドのどちらか、あるいはその両方によって発現している。その一方で、少数ではあるがそのどちらにもよらない花の色もまた存在する。その代表的な色素がベタレインで、マツバボタン、サボテン、ケイトウ、マツバギクなどナデシコ科とザクロソウ科を除くナデシコ目の9科に属する植物がこれに相当する。これらの赤紫の花はベタシアニンに、黄色はベタキサンチンに、その中間色は両者の共存によって発現している。フラボノイドのカルコンやオーロンもカーネーション、コスモス、トサミズキ、キンギョソウなどで黄色系の花色に貢献している。ゴシペチンなどの6-あるいは8-位に水酸基が置換されているフラボノールもまた、ヤグルマギク属やフヨウ属の黄色花では重要な役割を果たしている。また一方で、クェルセチンのような一般的なフラボノールもまたクレマチスなどの淡黄色花では多量に存在する場合、色素として機能していることが報告されている。最近、ツバキ科のキンカチャの濃黄色花が一般的なフラボノールとアルミニウムが錯体を形成することによって発現していることが明らかとなった。アロエとその近縁属も黄~橙色の花をつけるものが多いが、これらもアントシアニンではなく、アントラキノン系の色素によって発現していると推定されている。