抄録
ACC合成酵素はエチレン生合成の律速段階を担っている。我々は傷害で誘導されるトマトACC合成酵素LeACS2を用いて、ACSの翻訳後制御機構について解析した。LeACS2は460番目のセリン残基がリン酸化されているので、このリン酸化を認識する抗体を調製して解析した結果、LeACS2は翻訳後直ちにリン酸化されることが明らかになった。またprotein kinase(PK)とphosphatase(PP)の阻害剤を取り込ませ、pulse/chase実験によりLeACS2の半減期を調べた結果、PK阻害剤により半減期が70分から45分に短くなり、逆にPP阻害剤により半減期が150分に伸びた。このことはリン酸化が酵素の安定化に関与していることを示している。抗リン酸化抗体を用いてLeACS2をリン酸化するPKを発現クローニングした結果、CDPKが単離された。調べた3種類のCDPKアイソザイムはいずれもLeACS2をリン酸化する能力を保持していた。一方、LeACS2はCDPKだけではなくMAPKによってもリン酸化される部位を持つことがわかっている。Phos-tag アクリルアミドゲルを用いて解析した結果、LeACS2はCDPKとMAPKの両方によってリン酸化されていることが示唆された。MG132処理によってもLeACS2は蓄積する。これらを総合して、ACSの翻訳後制御機構について紹介する。